データベースの基礎

目次

RDBMSの基本概念

データベースとは、データを効率的に保存、管理、活用するためのシステムです。
その中でも今回は、もっとも一般的に使われているRDBMS(リレーショナル・データベース・マネジメント・システム)について説明します。

RDBMSは、データをテーブル(表)形式で管理するデータベースシステムです。
テーブルは行(レコード)と列(フィールド)から構成されています。
例えば、「会員情報」というテーブルでは、各会員が1つの行になり、「氏名」「住所」「電話番号」などが列になります。

RDBMSの最大の特徴は、複数のテーブル間の関係(リレーション)を定義できることです。
例えば、「会員情報」テーブルと「注文履歴」テーブルを関連付けることで、特定の会員がどんな商品を注文したかを簡単に把握できます。

RDBMSにおける重要な概念として以下があります:
主キー(Primary Key):各行を一意に識別する列または列の組み合わせ
外部キー(Foreign Key):別テーブルの主キーを参照し、テーブル間の関係を定義する列
インデックス(Index):データ検索を高速化するための索引
トランザクション:一連の処理をまとめて扱うための仕組み

初学者が覚えておきたいのは、RDBMSではACID特性というデータの信頼性を保証する4つの性質があることです。
・原子性(Atomicity):トランザクションは全て成功するか、全て失敗するかのどちらか
・一貫性(Consistency):トランザクションの前後でデータベースの整合性が保たれる
・独立性(Isolation):並行して実行されるトランザクション同士が互いに影響を与えない
・永続性(Durability):完了したトランザクションの結果は永続的に保存される

これらの概念を理解することで、データベース設計の基礎が身につきます。
次のセクションではSQLについて解説していきます。

SQLの基本

SQLとは「Structured Query Language」の略で、RDBMSを操作するための標準言語です。
SQLを使うことで、データの検索、追加、更新、削除などの操作が行えます。

SQLの基本的な命令は以下の4つに分類できます:
1. DML(Data Manipulation Language):データ操作言語
2. DDL(Data Definition Language):データ定義言語
3. DCL(Data Control Language):データ制御言語
4. TCL(Transaction Control Language):トランザクション制御言語

DML(データ操作言語)

日常的に最もよく使う命令群です。
SELECT:データの検索
INSERT:データの追加
UPDATE:データの更新
DELETE:データの削除

例えば、ユーザーテーブルから全ての情報を取得する場合は:
``` SELECT * FROM users; ```
新しいユーザーを追加する場合は:
``` INSERT INTO users (name, email, age) VALUES ('山田太郎', 'yamada@example.com', 30); ```

DDL(データ定義言語)

データベースの構造を定義する命令群です。
CREATE:テーブルなどの作成
ALTER:テーブル構造の変更
DROP:テーブルなどの削除

例えば、新しいテーブルを作成する場合は:
``` CREATE TABLE users ( id INT PRIMARY KEY AUTO_INCREMENT, name VARCHAR(100), email VARCHAR(100), age INT ); ```

SQL基本構文の注意点

初学者がSQLを学ぶときに覚えておくとよいポイントがあります。
・SQLは大文字小文字を区別しない場合が多いですが、命令は大文字、テーブル名やフィールド名は小文字で書く慣習があります
・SQLの文末にはセミコロン(;)を付けます
WHERE句を使うと条件に合ったデータだけを対象にできます
JOINを使うと複数のテーブルを結合して情報を取得できます

SQLには他にも多くの機能がありますが、最初は基本的なSELECT、INSERT、UPDATE、DELETE文と、WHERE句の使い方をマスターすると良いでしょう。
実際の業務では、これらの基本コマンドだけでもかなりの作業が可能です。

データベースの種類と選び方

データベースにはさまざまな種類があり、用途に応じて選ぶことが重要です。
ここでは主なデータベースの種類とその特徴を解説します。

リレーショナルデータベース

最も広く使われているタイプのデータベースで、前述したRDBMSです。
主な製品には:
MySQL:オープンソースで最も人気が高いRDBMS
PostgreSQL:高機能なオープンソースRDBMS
Oracle Database:企業向け商用RDBMS
SQL Server:Microsoftの商用RDBMS

NoSQLデータベース

「Not only SQL」の略で、従来のリレーショナルモデルにとらわれないデータベースの総称です。
大きく分けて以下の種類があります:

1. ドキュメント型:JSONのような構造化ドキュメントを保存
例:MongoDB, CouchDB
2. キーバリュー型:シンプルなキーと値の組み合わせで保存
例:Redis, DynamoDB
3. カラム指向型:列ごとにデータを保存。大規模データ分析に向いている
例:Cassandra, HBase
4. グラフデータベース:ノードとエッジでデータ間の関係性を表現
例:Neo4j, Amazon Neptune

データベースの選び方

データベースを選ぶ際に考慮すべき主なポイントは以下の通りです:

1. データの構造
・構造化されたデータが多い → RDBMS
・構造が定まっていない、または頻繁に変わる → NoSQL

2. スケーラビリティ
・垂直スケーリング(より強力なサーバーへの移行)が主 → RDBMS
・水平スケーリング(サーバー数を増やす)が必要 → NoSQLが有利

3. トランザクションの重要性
・データの整合性が極めて重要 → RDBMS
・多少のデータ不整合が許容される代わりに高いパフォーマンスを求める → NoSQL

4. 運用コストと技術スタック
・チームの技術力や予算に合わせて選定

インフラエンジニアとしては、複数のデータベースを組み合わせる「ポリグロットパーシスタンス」というアプローチも覚えておくと良いでしょう。
これは一つのシステム内で複数の種類のデータベースを用途に応じて使い分ける方法です。

初学者の方には、まずMySQLやPostgreSQLなどのオープンソースRDBMSから始めることをお勧めします。
これらは無料で使え、インターネット上の情報も豊富で学習しやすいためです。
基本を学んだ後、必要に応じてNoSQLや他のデータベースにも挑戦していくと良いでしょう。

まとめ

この記事では、インフラエンジニアを目指す方向けに、データベースの基礎について解説しました。
主なポイントをおさらいしましょう。

1. RDBMSの基本概念
・テーブル形式でデータを管理
・主キー、外部キーによるテーブル間のリレーション
・ACID特性によるデータの信頼性保証

2. SQLの基本
・DML: SELECT, INSERT, UPDATE, DELETE
・DDL: CREATE, ALTER, DROP
・WHERE句による条件指定、JOINによるテーブル結合

3. データベースの種類と選び方
・RDBMS: MySQL, PostgreSQL, Oracle, SQL Server
・NoSQL: ドキュメント型、キーバリュー型、カラム指向型、グラフDB
・用途に応じた適切な選択が重要

インフラエンジニアとして活躍するためには、これらの基本を踏まえた上で、実際のシステム設計や運用経験を積むことが大切です。
また、データベースのパフォーマンスチューニングやバックアップ・リカバリなどの運用面の知識も、今後学んでいくと良いでしょう。

最後に、データベース技術は日々進化しています。
クラウドサービスによるマネージドデータベース(AWS RDS, Google Cloud SQL, Azure Database)なども普及しています。
常に新しい技術に関心を持ち、学び続ける姿勢がインフラエンジニアには必要です。

この記事が、データベースの世界への第一歩となれば幸いです。
実際に手を動かして、小さなデータベースを構築してみることをお勧めします。
実践を通じて、より深い理解が得られるでしょう。