L2スイッチによる通信の仕組み

目次
ここまででIPアドレスやOSI参照モデルなどのネットワークの基本的な知識を学習してきましたが、とうとうネットワーク機器の話しに入ります。

今回はL2スイッチについて解説します。

OSI参照モデルの「ネットワークリンク層」で動作するネットワーク機器で、ネットワークの中では基本となる機器です。

L2スイッチを使わずに組まれた企業用のネットワークはまず存在しません。

そのくらい重要なものなので、しっかりと学んでいきましょう。

L2スイッチとは?

L2スイッチとは、同一ネットワーク内で複数の機器を接続するために使われる装置です。

同一ネットワーク内のトラフィックを管理し、データが適切な宛先に届くように「交通整理」をする役割を担っています。

ポイント! 「同一ネットワーク」の意味を覚えていますか?
覚えていない方は、「IPアドレスとサブネットマスク」の章をもう一度参照しましょう。

このL2スイッチは、MACアドレスによって通信相手を特定し、トラフィックの交通整理を行います。

L2SWイメージ
OSI参照モデルでいうレイヤー(Layer)2のMACアドレスを使ったスイッチ機器のため、「L2スイッチ」と言います。

例えば、オフィスの中で5台のパソコンをネットワークに接続する場合、これらのパソコンはL2スイッチを介して接続されます。

これらのパソコンは全員同じネットワークに所属している必要があります。

パソコンAからパソコンBにデータを送信したい場合、そのデータパケットはL2スイッチを通過し、パソコンBに届けられます。

これは大きな会議室で、ある人が別の特定の人にメモを渡したいとき、会議室の真ん中にいる司会者(L2スイッチの役割)がそのメモを受け取り、宛先の人だけに手渡すようなイメージです。

ポイント! L2スイッチは同一のネットワークアドレスの場合のみ通信ができます。

別のネットワークアドレスの相手と通信する場合は、別の章で説明するデフォルトゲートウェイとルーティングというものを使います。

MACアドレスとは?

同一ネットワーク内で通信を行う時、IPアドレスだけではなく「MACアドレス」という識別子が重要な役割を果たします。

MACアドレスは、ネットワーク機器に付けられた世界でただ一つの48ビット(6バイト)の識別番号です。

例えば「00:1A:2B:3C:4D:5E」のように、2桁の16進数が6組並んだ形で表されます。

このMACアドレスは、パソコンやスマートフォンなどのネットワーク機器が製造される際に、工場であらかじめ割り当てられています。

人間で言えば「指紋」のようなもので、その機器固有の識別子と考えることができます。
MACアドレスの構成
MACアドレスは48ビットで構成されていますが、以下のような構成で組まれています。

■前半24bit(OUI)
IEEE(米国電気電子学会)によってメーカー単位で割り当てられるものでOUIと呼ぶ。

■後半24bit
各メーカの独自管理で重複が無いように割り当てられた製品固有の識別子

以下は有名な企業のOUIを整理してみました。

MACアドレスを見るだけでもどこのメーカーかわかるようになっています。

OUI(先頭24ビット) メーカー名
00:0C:29 VMware, Inc.
00:50:56 VMware, Inc.
00:03:93 Apple, Inc.
00:00:0C Cisco Systems, Inc.
00:1A:A0 Dell Inc.
08:00:27 Oracle (VirtualBox)
00:00:E8 ソニー株式会社 (Sony Corporation)
00:13:04 ソニー株式会社 (Sony Corporation)
00:01:4A ソニー株式会社 (Sony Corporation)
00:0D:92 パナソニック株式会社 (Panasonic Corporation)
00:11:D0 パナソニック株式会社 (Panasonic Corporation)
00:80:F0 富士通株式会社 (Fujitsu Limited)
00:10:8B 富士通株式会社 (Fujitsu Limited)
00:A0:DE 日本電気株式会社 (NEC Corporation)
00:00:87 日立製作所 (Hitachi, Ltd.)
00:0D:54 日立製作所 (Hitachi, Ltd.)
00:00:4C エヌイーシー (NEC Corporation)
00:16:97 東芝 (Toshiba Corporation)
00:0F:20 東芝 (Toshiba Corporation)
00:00:39 東芝 (Toshiba Corporation)
00:26:88 キヤノン株式会社 (Canon Inc.)
00:80:77 ブラザー工業株式会社 (Brother Industries, Ltd.)
00:01:E3 シャープ株式会社 (Sharp Corporation)
00:17:5C SHARP Corporation
00:05:41 セイコーエプソン株式会社 (Seiko Epson Corporation)
00:30:85 セイコーエプソン株式会社 (Seiko Epson Corporation)

MACアドレスとL2スイッチによる通信の仕組み

同一ネットワーク内での通信は、MACアドレスとL2スイッチを使って行われます。

前項でL2スイッチにて、交通整理を行っていると言いましたが、具体的な流れを説明していきます。

データを送信したい機器(送信元)は、まず宛先のIPアドレスを知っていますが、まだ相手のMACアドレスについては知りません。

同一ネットワーク内ではMACアドレスで通信する必要があるので、相手のMACアドレスを何とかして知らないといけません。

この時活躍するのが「ARP(Address Resolution Protocol)」というプロトコルです。
ARPは「このIPアドレスを持っている人は誰ですか?」と全員に問いかけるものです。

該当するIPアドレスを持つ機器だけが「それは私です。私のMACアドレスはこれです」と応答します。

L2SWイメージ
具体的な通信の流れを見てみましょう。
例えば、パソコンA(IPアドレス: 192.168.1.10)がパソコンB(IPアドレス: 192.168.1.20)にデータを送りたいとします。

  1. パソコンAは、まず「192.168.1.20」が自分と同じネットワークアドレスかを判定します。
  2. 同じネットワークではない場合は、デフォルトゲートウェイへ送信します。
    同じネットワークの場合は、ARPリクエストを行います。今回はこちらですね。
    「192.168.1.20のMACアドレスは何ですか?」というARPリクエストをネットワーク全体にブロードキャスト(全員宛ての通信)します。
  3. 「192.168.1.20は私です。私のMACアドレスは00:1B:2C:3D:4E:5Fです」とパソコンBだけが応答します。
  4. これでパソコンAはパソコンBのMACアドレスがわかったので、宛先MACアドレスをパケットに書き込み、データを送信します。
  5. L2スイッチはこのパケットを受け取り、宛先MACアドレスを確認して、パソコンBにデータを転送します。
L2SWの通信イメージ
これは、大きな教室で先生が「田中さん、手をあげてください!」と言うようなものです。

教室にいる全員がその呼びかけを聞きますが、実際に応答を返すのは田中さんだけ、というイメージです。

MACアドレステーブル

L2スイッチは、自分の端子(ポート)にどのMACアドレスが繋がっているのかを自動的に学習する機能があります。

自動学習によりMACアドレスを記録したものを「MACアドレステーブル」と言います。
MACアドレステーブル
このMACアドレステーブルによって、通信を必要な機器にのみ転送することが可能になり、余計なトラフィック増加を防止し通信効率の向上を図っています。
MACアドレステーブルの更新
L2スイッチのポートに繋がっている機器は一生同じわけではありませんよね。

機器の交換などによりポートにつながっているMACアドレスが変更されることもあります。

こういった変更に対応できるようにMACアドレスには、一定期間通信がないとMACアドレステーブルから削除するという機能が存在します。

その機能を「エージアウト」と言い、エージアウトされるまでの時間を「エージングタイム」といいます。

エージングタイムアウトまでに通信が行われればエージングタイムをリセットし、もう一度カウントが始まります。

そして、エージングタイムを過ぎたMACアドレスは、L2スイッチから接続を切り離されたとみなして、MACアドレステーブルから削除されます。

まとめ

この記事では、インフラエンジニアを目指す初学者の方に向けて、L2スイッチによる通信の仕組みについて解説しました。

同一ネットワークの機器をつなぐためには必要となる機器です。

インフラエンジニアとして活動していく場合、必ず触れる機会のある危機となりますので、どういう時に使用するものなのか、どういう機能があるのかはしっかりと覚えておきましょう。

この記事が皆さんのネットワーク学習の出発点となれば幸いです。