リバースプロキシとCDNの違い

目次

CDNとは

コンテンツデリバリーネットワーク(CDN)は、ウェブコンテンツを効率的に配信するための分散型システムです。

CDNの基本的な考え方は、オリジンサーバーと呼ばれる元のサーバーからコンテンツをキャッシュし、世界中の複数の場所に配置されたエッジサーバーを通じてユーザーに配信することです。

CDNとは
CDNの主な目的は、ユーザーとコンテンツの物理的距離を短縮することにより、ウェブサイトやアプリケーションの読み込み速度を向上させることです。

例えば、日本のウェブサイトをアメリカのユーザーが閲覧する場合、通常であれば日本のサーバーから直接データを取得する必要がありますが、CDNを利用すればアメリカに設置されたエッジサーバーからコンテンツを取得できるため、大幅に応答時間を短縮できます。

また、CDNはトラフィックの負荷分散も行います。

多数のユーザーからのリクエストを複数のサーバーに分散させることで、オリジンサーバーへの負荷を軽減し、サイトのクラッシュを防ぎます。

さらに、DDos攻撃などのセキュリティ脅威に対する保護機能を提供するCDNも多くあります。

CDNは特に画像、動画、JavaScriptファイル、CSSファイルなどの静的コンテンツの配信に効果的ですが、近年では動的コンテンツの配信にも活用されるようになっています。

機能の重複と相違点

CDNとリバースプロキシは機能面で多くの重複点と相違点があります。

機能の重複点

両者ともクライアントとオリジンサーバーの間に位置し、リクエストの仲介役を果たします。

どちらもコンテンツのキャッシュ機能を持ち、繰り返しリクエストされるコンテンツを保存して高速に応答できます。

また、負荷分散の機能も共通しています。

多数のユーザーからのリクエストを複数のサーバーに分散させることで、サーバーへの過負荷を防ぎます。

セキュリティ面でも、クライアントからオリジンサーバーを隠蔽し、DDoS攻撃などから保護する役割を担っています。

さらに、SSL/TLS終端処理を行い、暗号化通信の負荷をオリジンサーバーから軽減する点も共通しています。

機能の相違点

最も大きな違いは規模と設計目的です。

CDNは地理的に分散した世界規模のネットワークで、物理的距離を縮めてコンテンツ配信を高速化することに特化しています。

一方、リバースプロキシは通常、単一のデータセンターや限られた地域内で運用され、主にサーバー保護や内部アーキテクチャの隠蔽を目的としています。

また、CDNは静的コンテンツ(画像、動画、JavaScript、CSSなど)の配信に特に強みを持ちますが、リバースプロキシはより汎用的で、動的コンテンツの処理や複雑なルーティング、アプリケーションレベルの処理にも対応しています。

CDNは通常サードパーティのサービスとして提供されることが多く、専門のプロバイダーが管理しています。

対してリバースプロキシは、多くの場合、組織が自社のインフラとして構築・管理するものです。

さらに、CDNは多様なコンテンツ最適化機能(画像圧縮、動的コンテンツの最適化など)を持つ傾向がありますが、リバースプロキシはHTTPヘッダー操作やURL書き換えなど、より低レベルのプロトコル処理に特化していることが多いです。

使い分けの基準

地理的な配信範囲

地理的な配信範囲は使い分けの重要な基準となります。

ユーザーが世界中に分散している場合、CDNを選択するのが適切です。

CDNはグローバルに配置されたエッジサーバーにより、物理的距離に起因する遅延を大幅に削減できるからです。

一方、主に特定の地域やデータセンター近辺のユーザーがサービスを利用する場合は、リバースプロキシで十分対応できることが多いでしょう。

コンテンツの性質

コンテンツの性質も選択に影響します。
画像、動画、CSSファイル、JavaScriptなど変更頻度の低い静的コンテンツが多いウェブサイトでは、CDNが最適な選択となります。

CDNはこのような静的コンテンツの配信に特化しているためです。

それに対し、ユーザー固有の情報や頻繁に更新されるコンテンツが主体のサービスでは、柔軟な処理が可能なリバースプロキシの方が適していることがあります。

インフラ管理

インフラ管理の観点も考慮すべきでしょう。

インフラを自社で完全に制御したい場合や、特殊な設定や処理が必要な場合はリバースプロキシが適しています。

対照的に、インフラ管理の負担を軽減したい組織にとっては、マネージドサービスとして提供されるCDNが便利です。

トラフィック特性

トラフィック特性も重要な要素です。

予測不能なトラフィックスパイクが想定される場合、自動的にスケールする能力を持つCDNの方が対応しやすいでしょう。

一方、トラフィックパターンが比較的安定していて予測可能であれば、適切に設計されたリバースプロキシでも十分対応できる場合があります。

アプリケーション特性

複雑なルーティングやパス管理が必要な場合、リバースプロキシはその強みを発揮します。

例えば、異なるバックエンドシステムやマイクロサービスを単一のドメイン下で統合して提供したい場合、リバースプロキシは細かいパスベースのルーティングルールを設定できます。

「/api/」へのリクエストはAPIサーバーへ、「/admin/」へのリクエストは管理システムへ、その他のパスは主要なWebアプリケーションへと振り分けるといった柔軟な設定が可能です。

リバプロのパスベールルート
また、URL書き換えやリダイレクト処理など複雑なHTTPリクエスト操作も、リバースプロキシの得意とするところです。

古いURLパターンから新しい構造へのリダイレクト、内部的なシステム構成を隠蔽するためのURL変換など、ビジネスロジックに密接に関連する処理をきめ細かく制御できます。

さらに、シングルページアプリケーション(SPA)での全てのリクエストをindex.htmlに転送する設定や、A/Bテストのためにトラフィックを異なるバックエンドに振り分けるなど、アプリケーション固有の要件に応じた高度な設定もリバースプロキシでは比較的容易に実現できます。

一方、CDNは基本的にオリジンサーバーのコンテンツをそのまま配信することを主目的としており、複雑なルーティングロジックには限界があります。

多くのCDNサービスも基本的なパスベースのルーティングや簡単なリダイレクト機能は提供していますが、リバースプロキシほどの柔軟性や細かい制御は一般的に期待できません。

したがって、複数のバックエンドシステムを統合したい場合や、複雑なURLパス管理が必要な場合は、リバースプロキシの採用が適しています。

併用パターン

実際の運用環境では、CDNとリバースプロキシを併用することが最適な選択となることも多いです。

階層型のアーキテクチャを構築し、CDNをフロントに配置してグローバルな静的コンテンツ配信を担当させ、リバースプロキシをバックエンドに置いてアプリケーションサーバーやデータベースへのアクセス制御や負荷分散を行うという構成が一般的です。

また、コンテンツの種類によって使い分ける方法も効果的です。

静的リソースはCDN経由で配信し、動的コンテンツやAPI呼び出しはリバースプロキシ経由で処理するという方法です。


CDN+リバプロ
例えば、Webアプリケーション、APIサーバー、管理ツール、レガシーシステムなど複数のシステムが混在する環境では、Nginx, HAProxy, Apache, Traffikなどのリバースプロキシで統合的なルーティングを管理し、その前段にCDNを配置して静的リソースの高速配信を担当させるという構成が多くの場合に効果的です。

このようなハイブリッド構成により、柔軟性と高パフォーマンスの両方を実現できるでしょう。

さらに、小規模なサービス開始時にはリバースプロキシから始め、ユーザーベースがグローバルに拡大してきたタイミングでCDNを追加するという段階的な導入アプローチも現実的な選択肢です。

まとめ

リバースプロキシとよく似ているCDNとの比較内容について解説しました。

CDNは、基本的に自社で構築するのではなくマネージドサービスを利用することになります。

最近は容易に利用できるものも増えていますので、単純に世界中の利用者へコンテンツを届けたい場合は、CDNは便利です。

ただし、あまり細かいことは苦手なので、色々なWebコンテンツを統合してパスを変えたり、細かな前処理を行わせたいならリバースプロキシがおすすめです。

どちらも優れた技術のため、ポイント毎に適したアーキテクチャが異なります。

内容にも書きましたが併用パターンも本当によく使われますので、どちらも設計できるようにまずは概念を覚えましょう。