L3スイッチによるルーティング

目次
今回の章では、「L3スイッチ」について解説します。

同一ネットワークの交通整理をする「L2スイッチ」に続いて、「L3スイッチ」です。

L3スイッチはネットワーク層を扱うスイッチです。

L3スイッチはインフラエンジニアでは関係してこないことはまずありませんので、しっかり理解しましょう。

L3スイッチの機能と仕組み

L3スイッチとは

L3スイッチとは、コンピュータネットワークで使われる大切な機械です。

「L3」は「レイヤー3」という意味で、「ネットワーク層」で動作するネットワーク機器であることを表しています。

レイヤー3ということは「IPアドレス」を扱うことができるので、ネットワーク部、ホスト部を解釈して、異なるネットワーク間で通信の交通整理を行うことができます。

たとえば、学校で考えてみましょう。

L2スイッチは「2年1組の中だけで話ができる」とすると、L3スイッチは「2年1組と3年2組の間でも話ができる」ようにする係の人みたいなものです。

ルーティング機能/ルーティングテーブル

L3スイッチによる異なるネットワーク間での通信の交通整理を「ルーティング」と呼びます。

ルーティングは、「経路選択」と訳すこともあり、データがネットワーク上でどの経路を通って目的地に到達するかを決定する仕組みです。

あるネットワークから別のネットワークへ通信をバケツリレーのように受け渡しをするイメージです。

この「どのように目的地まで運ぶべきか」を決定するプロセスがルーティングです。

L3SWイメージ
また、ルーティングを行うための地図を「ルーティングテーブル」といいます。

ルーティングテーブルには、宛先ネットワーク、次にデータを送るべき場所(ネクストホップ)などの情報を持っています。

ルーティングテーブル
L3スイッチよりパケットを受け取ったL2スイッチは、「L2スイッチによる通信の仕組み」で説明したような流れで自分のネットワークアドレス内にいる通信先へパケットを転送することができます。

これにより、別のネットワークアドレスに存在する通信相手にもパケットを届けることができるのです。

L2スイッチとL3スイッチの違い

L2スイッチの詳細は、「L2スイッチによる通信の仕組み」で紹介していますので、参照してみてください。

ここでは、L2スイッチ事態のことは理解している前提で違いを整理します。

L2スイッチは、OSI参照モデルの「データリンク層」を扱うNW機器のため、MACアドレスを使用して、通信を制御します。

なので、同一ネットワーク内の機器同士の通信のみ扱うことができます。

一方でL3スイッチは、OSI参照モデルの「ネットワーク層」を扱うNW機器のため、IPアドレスを使用して、通信を制御します。

つまり、異なるネットワーク間の通信を扱うことが可能です。

これらの違いを表にまとめると以下のようになります。

比較項目 L2スイッチ L3スイッチ
動作レイヤー データリンク層(レイヤー2) ネットワーク層(レイヤー3)
使用アドレス MACアドレス IPアドレス(およびMACアドレス)
主な機能 同一LANセグメント内での通信 異なるネットワーク間のルーティング
通信範囲 同一ネットワーク内のみ 異なるネットワーク間も可能
処理速度 高速(単純な処理のため) やや遅い(より複雑な処理を行うため)
コスト 比較的安価 比較的高価
適した環境 小規模ネットワーク 中〜大規模ネットワーク

ルーターとL3スイッチの違い

ルーターとL3スイッチの違いを整理します。

この2つは似たような機能を持っているため、違いがわかりづらいですが、設計目的や得意分野に大きな違いがあります。

L3スイッチが適した状況とルーターが適した状況がそれぞれありますので、的確に判断できるように違いを理解しておきましょう。

ルーターは異なるネットワーク間の通信を扱うという点ではL3スイッチと同じですが、通信先に違いがあります。

ルーターは主にインターネットとプライベートネットワーク(LAN)間の通信を得意とします。

一方でL3スイッチは、プライベートネットワーク(LAN)同士の通信を得意とするという違いがあります。

また、処理速度にも大きな差があり、ルーターと比較してL3スイッチのほうが高速な通信が可能です。

これらの差異を表で整理したものが下記です。

比較項目 ルーター L3スイッチ
主な目的 異なるネットワーク間の接続・経路選択 LAN内の高速パケット転送とルーティング
動作レイヤー ネットワーク層(レイヤー3)以上 データリンク層(レイヤー2)〜ネットワーク層(レイヤー3)
処理方式 主にソフトウェアベース処理 主にハードウェアベース処理(ASIC)
処理速度 比較的遅い 高速(特にLAN内のトラフィック)
WAN接続 可能。
様々なWANインターフェースをサポート(光回線、ADSL、専用線など)
基本的に不可。
主にイーサネットインターフェース中心
コスト 高機能なものは高価 同等機能のルーターより比較的安価
適した用途 インターネット接続、拠点間接続、複雑なネットワーク環境 社内LAN、データセンター内など高速なLAN環境

表からもわかるようにインターネットとプライベートネットワーク間(LAN)という特定の状況においてはルーターを使用するべきです。

ただ、プライベートネットワーク(LAN)内での異なるネットワーク間をつなぐ場合は、処理速度やコストを考えてもL3スイッチを採用するべきです。

ルーターとL3スイッチにはこのような違いがあります。

まとめ

この記事では、インフラエンジニアを目指す初学者の方に向けて、L3スイッチについて解説しました。

L3スイッチは、異なるネットワーク間の通信を可能にするルーティングは可能です。

ルーティングテーブルを参照して最適な経路を選択することで、データが目的地まで効率的に届けられます。

ネットワークは機器間の通信を届けるために作るものなので、このL3スイッチのルーティングがネットワークにおける最も根幹の仕組みと言えます。

この記事が皆さんのネットワーク学習の出発点となれば幸いです。